こんばんは、めーぷるです。
今日もピアニストのご紹介です。今日の主人公はヴァレンティナ・リシッツァ。
ピアノをやっている方なら、名前を聞いたことがあるかもしれません。少なくとも見たことがある方は多いはず。
というのもヴァレンティナ・リシッツァはYouTubeで50万人を超えるチャンネル登録者を抱える超人気YouTuberでもあるからです。
中には再生回数が5000万回目前の演奏もあるなど、ピアノ界に及ぼすその影響力大きさたるや、計り知れません。
今回はそんなヴァレンティナ・リシッツァの経歴、特徴、そしておすすめ演奏動画やおすすめCDをご紹介していきます。
目次
ヴァレンティナ・リシッツァの経歴
今日もっとも話題性のある女性ピアニストの一人であるヴァレンティナ・リシッツァ。彼女はいったいどのようなキャリアを歩んできたのでしょうか。
生い立ち
ピアノを始めたのは3歳8ヶ月の頃だそうです。両親に習い事の一環として習わされたとのことです。
特にピアノにこだわりがあったというわけではなく、他にもバレエやフィギュアスケート、水泳などを習っていたそうです。いかにもロシアといった感じ。
本人曰く練習は嫌いだったが、ステージの上で自分の音楽を表現するということに対しては当時からこの上ない喜びを感じていたそうです。
初めて間もない頃からその才能は誰の目にも明らかだったようで、なんと習い始めてたった1年でソロコンサートを開いてしまうほどの腕前に。
その有り余るほどの才能をもってして、ルイセンコ記念キエフ特別中等音楽学校、キエフ音楽院と順調にピアニストとしての研鑽を重ねていきます。
ただ、逸材である一方で、本人曰く「いつも先生が教えるのとは正反対のことばかりしていた。」とのこと。
音楽的反抗期といったところなのでしょうか。
また、キエフ音楽院ではのちに夫となるアレクセイ・クズネツォフと出会います。
二人は、1991年には二人で世界最高峰の2台ピアノのためのコンクールであるマレイ・ドラノフ国際2台ピアノコンクールに出場し、見事優勝を果たしました。
その後、レコーディングやシャルル・デュトワを始めとした有名指揮者との共演を重ねて現在至ります。
なのですが、リシッツァの人生を語るには欠かせないものがもう一つ。そう、YouTubeです。
その名を世界に轟かせたYouTube
今ではYouTubeで検索すれば、ほとんどどんな曲であっても演奏動画を見つけることができます。便利なものです。
また最近ではストリートピアノっていうのも流行ってますよね。
ところがヴァレンティナ・リシッツァが動画投稿を始めた頃はYouTubeもまだ黎明期と呼べる時代でした。
ピアノ演奏の動画も全くなかったわけではないにしろ、誰もが知っているようなピアニストYouTuberというのはまだ存在していない時代です。
ある意味、ヴァレンティナ・リシッツァはピアノ界のヒカキン的なポジションなわけです。
きっかけは2006年に夫のアレクセイ・クズネツォフがリシッツァの演奏するショパンエチュードの動画をYouTubeに投稿したことでした。
元々は『Valentina Lisitsa Chopin Etudes』というDVDの宣伝用にとアップロードした動画だったのですが、これが見事大ヒット。
DVDの方もものすごい勢いで売れたようです。
この動画をきっかけに、ヴァレンティナ・リシッツァはピアニストとしての実力を世界に広く知られることとなるのです。
ピアニストというと国際コンクールなどで地道に実績を重ねていく、というのが一般的ですが、結果的にWEBマーケティングを強力な味方に付けた形となりました。
ヴァレンティナ・リシッツァの特徴
リシッツァはチェスがお好き
ヴァレンティナ・リシッツァにもピアノが嫌になったという時期はあったようです。
コンクールで演奏に優劣を付けられるというプレッシャーがあったのだとか。スポーツとしての音楽には共感できなかったそうです。
そんなときヴァレンティナ・リシッツァが夢中になったのがチェスでした。
チェスはピアノとは違い、頭脳をもってして敵を制するという明確なコンセプトをもったスポーツです。
チェスもなかなか達者だったようで、チェスプレーヤーを目指すことを本気で考えたこともあったのだとか。
有名なピアニストってインテリジェンスを感じさせるようなエピソードを持つ人ばかりですね。羨ましい……。
ベーゼンドルファーの伝承者
現在世界的に使われているピアノというと、やはりスタインウェイとヤマハが優勢、ついでKAWAIといった状況です。(最近はFIZORIという新興勢力も。)
そんな中、老舗ピアノメーカーの一つ、ベーゼンドルファーは悲しきことにどんどん影が薄くなってしまっています。
ベーゼンドルファーのピアノの特徴は何と言っても「余分な6つの鍵盤」にあります。
この6つの鍵盤は打鍵するためではなく、倍音を利用して中低音域の響きを豊かにするということにその存在意義があります。
誤って打鍵してしまわないように黒色で塗られているよ!
その一方キーが重いことから、どうしてもピアニストを選ぶ楽器でもあり、キーが軽いピアノが世界的なトレンドになりつつある現在では、敬遠されつつあるのです。
ヴァレンティナ・リシッツァはそんなベーゼンドルファーを現在でも愛用している数少ないピアニストとして有名です。
「伝統的で、ヴィンテージ感のある、それでいて闇を感じるような音」がたまらなく好きなのだとか。
魔女のごときテクニック
ヴァレンティナ・リシッツァはなんとなく見た目に魔女っぽさがありますよね。
実際、彼女は魔女を彷彿させるような非常に高度なテクニックの持ち主としても有名です。
手を平たくして弾く姿もロシアのピアニストらしいですね。
そのせいか、手もとても大きく見えます。(でも、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の冒頭の和音はバラして弾いていますね。)
女性ピアニストの中でも特に恵まれた体格をしていて、その様子を「女版リスト」と例える声も。
フランツ・リストは偉大な作曲家であると同時に、身長185cmで巨大な手を武器に、超技巧派ピアニストとして鳴らしたことで有名です。
確かにそう言われてみると、重なる部分はありますね。
レパートリー
ヴァレンティナ・リシッツァのリシッツァのレパートリーは本当に偏りが全くないといってもいいくらい幅広いから驚きです。
ベートーヴェン、ラフマニノフ、リスト、シューベルト、シューマン、ショパン、ブラームス、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチ、チャイコフスキー、スクリャービン、ムソルグスキー、JSバッハ……
偏りない練習をしているからこそあの超人的なテクニックも培われるのかもしれませんね。
ヴァレンティナ・リシッツァのおすすめ演奏動画
YouTubeからヴァレンティナ・リシッツァのおすすめ演奏動画をご紹介いたします。
ソナタ14番「月光」(ベートーヴェン)
これがリシッツァの演奏動画でも圧倒的な人気を誇る月光ソナタの演奏です。5000万回再生に達する日もそう遠くはなさそう。
とてもテンポが早い曲ですが、リシッツァの弾き方には本当に無駄なモーションが無いため、いとも簡単に弾いているように見えますね。余裕が違います。
魔女の異名にふさわしい素晴らしい演奏です。
ラ・カンパネラ(リスト)
こちら「ピアノの魔術師」こと、リストの超有名な一曲です。
もう、リストの霊がリシッツァに乗り移ったのではないかと思ってしまうほどの演奏です。
冒頭からテンポがめちゃくちゃ速いですね。そしてそれを全く感じさせないようにさらっと弾きこなしてしまう若き日のリシッツァ嬢。
そうなるのが当たり前であるかのように、指が動いているといいますか。
この曲、冒頭もそうですがとにかく跳躍が多くて、相当の度胸がないとこのテンポで弾けないと思います。
3分20秒あたりの一番難しい(と個人的に思う)跳躍は流石のリシッツァでも外してしまっていますが、もうそんなこと誰も気にせず見入ってしまうんじゃないでしょうか。
ハンガリー狂詩曲第2番(リスト)
もう一つリストの作品いってみましょう。リシッツァはテクニシャンの色合いが強いタイプのピアニストなので、やはりリストとの相性は良い気がします。
弾き方をみていて思うんですが、リシッツァは関節の一つ一つが柔らかくて、それでいて強靭なんだろうなって思います。そしてブレない体幹。
これらを無くして、リシッツァの奏法は実現不可能でしょう。
で、肝心の演奏についてはもう「すごい」という言葉じゃ物足りないくらい。完全に人間卒業しましたね。おめでとうございます。
練習曲Op.10-12『革命』(ショパン)
こちら先述のショパンの練習曲シリーズの動画の一つ。この曲は特に知名度の高い左手の練習曲です。
ベーゼンドルファーということでバスの音がよく響きますね。1拍目の音がとてもずっしりくる感じ。
他にもショパンの練習曲の演奏動画はいくつか上がってますので、気になるかたはそちらものぞいてみて下さい。
ヴァレンティナ・リシッツァのおすすめCD
ヴァレンティナ・リシッツァのおすすめCDの紹介です。
Live at the Royal Albert Hall
こちらリシッツァのライヴ音源です。
リシッツァというピアニストが初めての方にはこのCDが非常におすすめです。
ショパン、リスト、スクリャービン、ベートーヴェン、ラフマニノフと幅広い作曲家の作品を一気に聞くことができます。
ショパンのノクターンでは技巧派ピアニストとはまた別の顔を見ることができます。
Etudes
エチュードとはピアノの練習曲のことです。テクニシャンのリシッツァの得意分野ですね。
このアルバムにはショパンの24の練習曲とシューマンの交響的練習曲が収められています。
練習曲とはいえ、どちらも無機質な訓練とは全く異なり、非常に音楽性豊かな作品となっています。
リシッツァの技巧を存分に楽しみたいという方にはおすすめです。
おわりに

さて、今回はヴァレンティーナ・リシッツァについてご紹介いたしましたが、いかがでしたでしょうか。
YouTubeから飛躍を遂げたリシッツァはクラシック界でも異色の存在です。
これからも元祖ピアノ系YouTuberとしての活躍に期待したいところですね。
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