外出自粛ということで退屈なGWが続いております。
ピアノ好きのみなさんはこの機会にクラシックについて色々調べ物をして、マニアックな知識を仕入れながらお過ごし……なのかもしれません。(適当)
まあ、そんな方がどのくらいいらっしゃるのかは分かりませんが、このサイトが少しでも暇つぶしになれば幸いでございます。
さて、今回の主人公はニコライ・ルガンスキー。現代を代表するロシアのトップピアニストの一人ですので、名前を聞いたことがあるという方も少なくないのではないでしょうか。
広大なレパートリーを持つ彼ですが、特にラフマニノフ演奏においては高い評価を受けているピアニストの一人でもあります。
そんなニコライ・ルガンスキーの経歴・特徴・おすすめ演奏動画・おすすめCDについて見ていくことにしましょう。
目次
ニコライ・ルガンスキーの経歴
ニコライ・ルガンスキーはロシアのピアニストの王道を歩んだ超エリートでした。そんな彼の経歴を見てみましょう。
エリート街道まっしぐらの青少年期
ニコライ・ルガンスキーは1972年4月26日に旧ソ連のモスクワで生まれました。
父は物理学者、母は化学者というインテリ一家の生まれなんだそうです。
5歳からピアノを習い始めたそうですが、一年もたたないうちにベートーヴェンのソナタを耳コピして弾いてしまったなどの逸話も残しています。
まだ楽譜は全く読めなかったものの、耳の良さに関しては天性のものを持っていたということが窺い知れます。
その後、1979年からはモスクワ中央音楽学校に進学。
モスクワ音楽院へと行く人は大体ここに通っているイメージですね。日本でいう藝高に似た存在でしょうか。(学年のレンジが違いますけどね。)
コンクールでの栄光
モスクワ中央音楽学校時代には、
- トビリシ国際ピアノコンクール第1位(1988年)
- バッハ国際ピアノコンクール第2位(1988年)
といった具合に早くも国際ピアノコンクールでの入賞歴もあります。
1990年からはモスクワ音楽院へと進学。
モスクワ音楽院ではセルゲイ・ドレンスキーという名ピアノ教師から直接指導を受けることとなるのですが、彼はあのブーニンやマツーエフを指導したことでも知られています。
また最近バラエティ番組ですっかりお馴染みになっている清塚信也も同じドレンスキー門下だったりします。
ソ連当局からも表彰を受けており、まさにロシアピアニズムの重鎮というべき人材なのです。
モスクワ音楽院時代には、世界3大ピアノコンクールの一つであるチャイコフスキー国際音楽コンクールのピアノ部門にて1位なしの第2位を受賞しています。
最近だと、2019年大会で藤田真央さんが同コンクールで同じ2位を獲得したのも記憶に新しいですよね。
このコンクールでの活躍をきっかけとして、メロディヤ(ソ連)とヴァンガード・クラシックス(オランダ)のレーベルから録音活動もスタートさせます。
モスクワ音楽院を1995年に卒業した後も、1997年まではドレンスキーの下で研究科に所属し、1998年以降はドレンスキーの助手としてモスクワ音楽院で教鞭を取っています。
このまま順調にキャリアを積み上げればゆくゆくは教授に上り詰めるのではないでしょうか。
また、2013年には「ロシア人民芸術家」ならびに「ロシア功労芸術家」も受賞しています。
現在もロシアを代表するピアニストとして絶賛活躍中です。
ニコライ・ルガンスキーの特徴
ニコライ・ルガンスキーの特徴について見ていくことにしましょう。
高度な技術
ニコライ・ルガンスキーは現在、世界でも指折りのヴィルトゥオーソ(名人)として知られており、技巧的な曲の演奏においては特にその真価を発揮すると言って良いでしょう。
指もめちゃくちゃ細長いので、まさにピアニスト向きとも言える手をしております。
ロシアのピアニストと言いますと、円熟味が増すとともにお腹がぽっちゃりしてくるのが恒例ですが、彼の場合は50歳を目前に控えた今でも細身のまま。
細身だけれども体幹はしっかりしているタイプなんでしょうね。
凄まじいテクニシャンでありながら、全体的にさらっと弾いてしまう。いわゆるスマート系の技巧派に分類されるのではないかと思います。
レパートリー
「ルガンスキーといえばラフマニノフ」そんな印象を持っているファンも少なくないのではないでしょうか。
若い頃はその神童ぶりから「ラフマニノフの再来」と言われたこともあるそうですよ。同じロシア人としてはこの上ない褒め言葉でしょうね。
実際ラフマニノフのレパートリーは相当広く、主要なピアノ作品のほぼ全てをカバーしています。
前奏曲、音の絵、ピアノ協奏曲、楽興の時、ピアノソナタなどなど……。
ラフマニノフ自身が歴史に残る大ピアニストでしたので、高度な技巧が求められる作品ばかりですが、テクニシャンであるルガンスキーにはうってつけです。
実際はラフマニノフの他にも、バッハ、ベートーヴェン、ドビュッシー、シューベルト、メトネル、リスト、ショパンなど案外幅広いレパートリーを持っています。
ただ、ショパン演奏に関しては必ずしも評価が高くないようで。コンサートに行かれた方の感想を見ても、評判はイマイチ……。
Op.10-8あたりは得意曲なのでよく弾いているイメージのルガンスキーですが、やはり相性というものがあるんですかね。
生で聴いてみない限り、真偽の程はわかりかねるところではあります。
ニコライ・ルガンスキーのおすすめ演奏動画
現代屈指のテクニシャン、ニコライ・ルガンスキーの演奏動画を見てみましょう。
楽曲の時Op.16より第4曲(ラフマニノフ)
ラフマニノフが若かりし頃に残した大作の一つ、「楽曲の時」。シューベルトも同名の作品を残していますが、ラフマニノフも意識して書いたと言われています。
その中でもいかにも技巧的な感じがするのが4番。
左手がとにかく忙しく動きまわります。それでいて右手も重音やら細かいパッセージが連続するため、音を取るだけでも大変。
しかしながら、ルガンスキー先生は少しも苦心することなくさらっと弾いてのけてしまっています。
クールなイメージのルガンスキーですが、かなり情熱のこもった演奏でもあります。ラフマニノフ へのただならぬ重いというのが伝わってきます。
とにかく見ていて「かっこいい!」と思わずにはいられない演奏動画です。
ピアノソナタ第30番(ベートーヴェン)
こちらベートーヴェンの晩年のピアノソナタの傑作、30番。最後のやたら長い悪夢のようなトリルでも有名ですね。
ロマン派の香りがするこの作品ですが、ルガンスキーはピアノスティックな面よりも、表現面に最大限のエネルギーを使っているように感じられます。
「濃厚なルガンスキーが見られる」とでも言いましょうか。
同音連打の音とバスの音がかなり硬質なのは、ロシア人ピアニスト特有と言いましょうか。好き嫌いが分かれそうなとこではあります。
昔は技巧派の色合いが強かったルガンスキー ですが、ピアニストとして変化しつつあることが感じられるような演奏であることには違いありません。
ニコライ・ルガンスキーのおすすめCD
ニコライ・ルガンスキー の名盤についてみていくことにしましょう。
ショパン 24の前奏曲
ルガンスキーのショパンと言いますとエチュード全集の方も有名なのですが、個人的にはこちらを推したいところ。
ショパンの『24の前奏曲 Op.28』はもともとショパンの練習曲を制作する際に選に洩れた曲をいくつか含んでいると言われています。
確かに8,16,24と8の倍数の曲は中核を為すべく、非常にピアニスティックな作品ですし、他にも3番や12番もなんとなく練習曲のような佇まい。
作品番号を考えても練習曲のOp.25と非常に近いですからね。個人的にもかなり説得力のある話だなと思います。
前置きはここまでにして、このルガンスキーの前奏曲の演奏について。
エチュード全集の時同様、テクニックは相変わらず高い次元を保っているのですが、このアルバムの方がさらに一曲一曲の魅力を引き出そうとしている努力が垣間見えます。
24の曲の全体としてのまとまりよりも一つ一つの小品の個性を優先しているイメージです。
聴く人にとっては若干くどいように感じられるかもしれませんが、良くも悪くもさらっと弾いてしまっていたイメージの練習曲よりも、より内面的な部分での進化を感じられるアルバムです。
ラフマニノフ 練習曲全集
『音の絵』のサブタイトルが付いていることでも知られるラフマニノフの練習曲。
知名度こそそこまで高くないのかもしれませんが、コンクールではショパンやリストと並んで課題曲の練習曲群の一角を形成しています。
ラフマニノフはそれぞれの楽曲に明確なイメージを持って作曲したそうですが、それを公にはしていません。どのような風景を頭の中に描いて演奏するかは、演奏者に委ねられているのです。
(とはいえ、うっかりネタバラシしてしまった曲も中にはあるんですけどね。)
そもそも全集を録音している人が数少ないというのはあるのですが、ルガンスキーのアルバムは名盤の一つと言って間違い無いでしょう。
彼の硬質な音もラフマニノフには見事にマッチしています。ラフマニノフの自演を聞いても結構ガンガン系の音で弾いてたりしますからね。(左手連続オクターブなどはその傾向が顕著なイメージ。)
ラフマニノフ弾きとしての本領発揮と言わんばかりの堂々たる演奏です。歌い回しもなんだか他の作曲家の作品を弾いている時よりもこなれている感があり、相性の良さを感じさせます。
※このCDは商品ページが見つかりませんでした。
おわりに

さて、今回はラフマニノフ弾きとして名高いピアニスト、ニコライ・ルガンスキーについて見てきましが、いかがでしたでしょうか。
最近ではドビュッシーの新譜を出していたりと、ピアニストとして新たな境地に足を踏み入れているようです。
技術に関しては世界でも指折りのものを持っていますので、「ネクスト・ポリーニ」のようなポジションに立つ日もそう遠くないかもしれませんね。
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