本日は、若手ピアニストの中でも特に期待されているピアニスト、ドミトリー・シシキンについてご紹介します。
彼は同世代のピアニストの中でも飛び抜けたコンクール受賞歴を誇り、すでにコンサートピアニストとしての活動も精力的に行なっています。
とはいえ、日本での知名度はまだまだ決して高くないと思われます。
必ずやこの先トップピアニストとして活躍する超逸材ですので、これを機にぜひチェックしておきましょう。
目次
ドミトリー・シシキンの経歴
ドミトリー・シシキンは1992年2月12日にロシアのチェリャビンスクで生まれました。
彼は1歳半の頃には母親の弾くピアノに強い興味を示していたそうで、ピアノ教師をしていた母のイリーナからピアノの手ほどきを受けることとなります。
2歳の頃には簡単な作品を演奏するようになっていたのだとか。3歳では初リサイタルを行なったようです。
4歳になるとモスクワ州チャイコフスキー音楽院の特別子供学校で本格的にピアノを勉強することとなります。ここでシシキンはミハイル・ホフロフというピアノ教師からピアノの指導を受けました。
6歳の時には、オーケストラと初の共演も果たしています。この頃からマスコミに「とんでもないスキルを持った子供がいる!」と騒がれていたのだとか。
ロシアといえば、アシュケナージやキーシンなど名だたるピアニストを生み出してきた世界有数のピアノ大国でもあります。そんな国で騒がれるというのですから、相当の衝撃であったことが伺えます。
9歳で今度はモスクワのグネシン州立音楽大学に入学します。ここは大学という名前がついていますが、音楽家を目指す才能ある子供が学ぶことを目的として設立された学校なんだそうです。
同じく9歳の時には、赤の広場においてチャイコフスキー音楽院での恩師であるミハイル・ホフロフ指揮のもと、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を演奏しました。
この曲のソロパートは技巧的なパッセージが満載で、おそらく手の大きさも含めて体が相当に成長していないと演奏することが難しいと思われます。
おそらくシシキンはこの頃から体格に恵まれていたのかもしれませんね。
その後チャイコフスキー音楽院へと舞い戻り、ここで、現在最も有名なピアノ教師の一人であるエリソ・ヴィルサラーゼとの出会いを果たします。
ヴィルサラーぜは現在世界で最も有名なピアノ教師と言っても過言ではない存在で、現在もピアニストとして活動する傍、ボリス・ベレゾフスキーなど世界的なピアニストを世に送り出しています。
そんな彼女の元でシシキンは研鑽を積み、10代半ばからは多くの国際コンクールにチャレンジするようになっていきます。
- 2013年 ブゾーニ国際ピアノコンクール第3位
- 2015年 ショパン国際ピアノコンクール第6位
- 2016年 エリザベート王妃国際音楽コンクール ファイナリスト
- 2017年 トップ・オブ・ザ・ワールド国際ピアノコンクール第1位
- 2018年 ジュネーヴ国際ピアノコンクール第1位
- 2019年 チャイコフスキーピアノコンクール第2位
こうして見ると、世界の名だたるコンクールで入賞を重ねており、輝かしいコンクール歴の持ち主であるということがわかることでしょう。
特にチャイコフスキー国際コンクールに関しては2015年にも挑戦しているのですが、その時は2次予選に進むことができず敗退してしまっています。
そして2019年には再挑戦し、日本の藤田真央さんと並び、見事第2位を獲得しています。祖国ロシアでのコンクールとあって、思い入れも強かったのかもしれませんね。
現在はカターニア(イタリア)のヴィンチェンツォベッリーニ音楽院でエピファニオ・コミスに、ハノーヴァー音楽大学でアリー・ヴァルディに師事しています。
すでにオーケストラとの共演も数多く、最近ではアジアとヨーロッパを中心に演奏活動を行なっています。
ドミトリー・シシキンの特徴
今世界で最も有望な若手ピアニストの一人であるドミトリー・シシキン。彼の特徴について見ていきましょう。
とんでもなく大きな手
ドミトリー・シシキンのコンクールでの映像などを見ていると、本当に手が大きくて驚きます。鍵盤の上に巨大イカ誕生。
ピアノを弾くために生まれてきたかのような細長い指をしています。
ラフマニノフの10度和音なども軽々鍵盤の上からつかむことができるようです。あそこまで大きいと逆に窮屈だったりしないのでしょうか。
同じロシアの名ピアニスト&作曲家のラフマニノフは13度(ドからラまで)届いたと言われていますが、シシキンもそれに匹敵するサイズかもしれません。
シシキンは音の一つ一つの重厚感・豊かさが特徴的ですが、単純に手が大きい分鍵盤に効率的に重みを伝えることができる、というのもありそうですね。
ドミトリー・シシキンの彼女
シシキンのインスタを見ると、彼女とのツーショットが投稿されています。
それがこちら。
なんとなくアジア系の顔立ちをしていることがわかります。
すでにアジア圏でも幅広く演奏活動を行なっているドミトリー・シシキンですので、ロシア以外の国での出会いというのも十分に考えられそうですね。
ドミトリー・シシキンのSNS・公式HP
Instagram: https://www.instagram.com/shishkindmitry/?hl=ja
HP: https://www.shishkindmitry.com/
YouTube: https://www.youtube.com/user/Krinkelss1
Twitterのアカウントはどうやら現時点では存在していないようです。一方、Instagramはかなり活発に更新されています。
レパートリー
シシキンの演奏会でのプログラムを見る感じですと、リスト、ショパン、ラフマニノフあたりが彼の最も得意とするところなのであろうと思われます。他にもプロコフィエフ、スクリャービンなど。
バロック・古典派音楽に関してはあまり披露していない印象。(モーツァルトのピアノ協奏曲とベートーヴェンのワルトシュタインくらいでしょうか。)
やはりテクニック面で相当なものを持っていますので、華やかで弾き映えのするロマン派音楽との親和性が高そうです。
最近ではメトネルも積極的にプログラムに取り込んでいるようですね。
ドミトリー・シシキンのおすすめ演奏動画
ドミトリー・シシキンのおすすめ演奏動画をご紹介します。
メフィストワルツ第1番(リスト)
コンクールの定番曲であり、リストの難曲の一つであるメフィスト・ワルツ。
ドミトリー・シシキンはほとんどのコンサート・コンクールでこちらの曲を演奏しており、彼の鉄板曲と言って良いかと思います。
跳躍も、手が大きい分移動距離が少なくて済みそうで羨ましい限り。
シシキンはやや前かがみで弾くのが特徴なんですよね。そして、その視線にはとてつもない集中力を感じ取ることができます。
ラ・カンパネラ(リスト)
こちらもシシキンの得意曲。
こちらは20歳頃の演奏だというのに、すでにトップピアニスト顔負けの完成度を誇っています。
この曲、特に跳躍に関しては誰にとってもきついはずなのですが、シシキンはそれを全く感じさせません。悠々とこなしている感じ。
変にテンポを攻めることもなく、安定した演奏ですね。さすがです。
ピアノソナタ2番(ラフマニノフ)
こちらもここ最近のコンサートやコンクールで頻繁に弾いているので彼の得意曲なのではないかと思われます。
この映像は優勝した2018年のジュネーヴ国際ピアノコンクールのものです。出場者の中でも実績が頭一つ抜けていたこともあり、貫禄の演奏といったところでしょうか。
重厚感が大切なラフマニノフ、やはりシシキンは相性が良いような気がします。ロマン派音楽ながら、感情に流されすぎないところもGood。
練習曲Op.10-2(ショパン)
こちらショパン国際ピアノコンクール1次予選なのですが、個人的に最も衝撃を受けた演奏です。
この曲を弾いたことがある人ならこのスピードがいかに常軌を逸しているかということがわかるのではないでしょうか。
この曲は聞こえは非常に地味なのですが、1,2で和音を弾きつつ3,4,5という可動性が劣る指だけで半音階を弾いていく、という技術的に非常に高度な曲です。
なんとなくは弾けてるけれどもちょくちょく掠れたような音になってしまうというピアニストも少なくない中、シシキンは半音階をほぼ完璧に演奏し、和音進行できちんと歌う余裕まで。
ショパンコンクールの審査員席ともあろう場で寝ていたとの噂のユンディ・リも、流石に目を醒ましたのではないでしょうか。
ドミトリー・シシキンのおすすめCD
Chopin
こちらショパン国際ピアノコンクールのライヴ音源です。
第6位の演奏とあってどの曲も高次元です。とにかくテクニックが安定しているのが印象的です。
おわりに

今回はドミトリー・シシキンについて見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
年齢も27歳ということで、今まではコンクールに積極的でしたが、今後は演奏会により比重をおいて活動することが予想されます。
(2020年のルービンシュタイン国際にエントリーする可能性も考えられますが。)
すでに色々なオーケストラからも引く手数多のようですので、チャイコフスキー国際で2位を獲得したばかりの今年は大きな飛躍が見られるのではないでしょうか。
スター候補生ですので、ぜひぜひシシキンをチェックしておきましょう!
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