こんにちは、めーぷるです。
トリフォノフに引き続き、今日もロシアのピアニスト紹介をしていきます。
今日の主人公はデニス・マツーエフ。超有名かというとそういうわけでもないのですが、一部のファンからは根強い人気を誇っているであろうピアニストです。
その演奏スタイルはまさに重戦車のごとし。力強いを通り越して、破壊的な打鍵でとにかくピアノを鳴らしまくります。
まあ、この演奏スタイルを認めない音楽家も少なくないでしょう。でも、一部に認めてくれる人がいるからオーケー。そんなピアニストです。
というわけで、今回はマツーエフの経歴、特徴、おすすめ演奏動画、おすすめCDについて見ていくことにしましょう。
目次
デニス・マツーエフの経歴
ロシアの有名ピアニストの一人、デニス・マツーエフのルーツを辿って見ましょう。
音楽家一家に生まれて
マツーエフは1975年6月11日にロシアのイルクーツクという地で生まれました。
母はピアノ教師、父はピアニスト兼作曲家ということで、音楽家一家に生まれたようです。
3歳の時にテレビで聞いたメロディーをピアノで演奏するなど、音楽家としての資質の片鱗を見せていたようです。
4歳の頃から父がピアノを教えていたそうで、9歳の時にはハイドンのピアノ協奏曲を弾いてピアニストとしてのデビューを果たします。
音楽の本場モスクワへ
1990年に行われた奨学金をかけたコンクールで入賞したことをきっかけに、翌年から月1000ドルの支援を受けてモスクワ音楽院付属中央音楽学校へと転入します。
モスクワ時代からすでにロシア国内だけでなく海外での演奏活動も行っていたようです。おそらくそれなりに優秀な方だったのではないかと思われます。
そして、1994年には南アフリカで行われたローデンポート国際音楽コンクールにて優勝。
聞き慣れないコンクールではありますが、優勝ですからね。本人の自信にもなったのではないでしょうか。
同じ年にはモスクワ音楽院に進学し、アレクセイ・ナセドキンという人物に師事するようになります。
この人物、遡ってみるとネイガウス門下の系譜にその名を連ねる一人のようです。やはりロシアと言ったらネイガウス、になってしまうのですね、結局。
ドレンスキーとの出会い
1997年からはセルゲイ・ドレンスキーに師事するようになります。ナセトキンの推薦だったようですね。
ドレンスキーと言えば、ニコライ・ルガンスキーやスタスラフ・ブーニンも師事していたロシアの名教授であります。今年の2月に息を引き取られましたが……。
ルガンスキーと全然タイプが異なりますけど、同じ先生に指導を受けていたというのもなかなか興味深い。
ドレンスキーはマツーエフのことを
完璧な技術、そして豊かな表現力を持った聡明な生徒
と評しています。
そして、1998年にはチャイコフスキー国際コンクールにて優勝を果たします。
ここまで意外にコンクール歴に乏しい印象のマツーエフでしたが、いきなり世界3大コンクールに出て優勝とは。
国民的ピアニストへ
コンクールでの活躍もあって、当時のロシアの大統領エリツィンの作成したゴールデンブック「New Names」にも取り上げられ、国からも手厚い支援を受けることとなります。
その後は年間120近いコンサートをこなす超売れっ子ピアニストとなります。
それだけでも十分忙しいと思うのですが、マツーエフは若い音楽家の支援にもかなり積極的でして、2016年には「国際若手ピアニストのためのグランドピアノコンクール」なるイベントの芸術監督にも就任してみたり。
「そもそもグランドピアノを使わないピアノコンクールなんてあるのだろうか?」というツッコミを入れたくなりますが、我慢しよう。
そのほかにも世界中の音楽イベントの芸術監督を務めるなど、とてつもなく忙しく過ごしていらっしゃるようです。
本当にいろいろとやられているようなので、並べておきますか。
- 2014年 ソチオリンピック 聖火ランナー&閉会式での演奏
- 2014年 ユネスコ大使就任
- 2016年 W杯ロシア大会アンバサダー就任
あまり首を突っ込むと危ないかもしれませんが、国からの寵愛ぶりがすごい。
せっかくなのでオリンピックの時の映像もどうぞ。
マツーエフは音量ではおそらく誰にも負けませんので、そういう意味でもこういう舞台では適任だったのでしょう。
デニス・マツーエフの特徴
デニス・マツーエフの演奏スタイルなど、見ていくことにしましょう。
演奏スタイル
デニス・マツーエフの演奏スタイルは「鍵盤ぶっ叩け!」とでも言いましょうか。とにかく度を越しそうなほどパワフルであります。
身長も190cmを超える巨体であり、溢れるエネルギーを全てピアノにぶつけているかのよう。
テクニックそのものはなかなかのもの。今でこそぽっちゃりしていますけどね、指はまだまだ動く動く。
とにかく音量重視の演奏スタイルなので、叙情的な曲をしっとりと聴かせるというよりはむしろ、オーケストラをバックに協奏曲のソリストとして映えるタイプですね。
ジャズもレパートリー
個人的にマツーエフはジャズも弾けるというのは大きな加点ポイント。
自作の即興作品をアンコールで弾いたりするのですよ。いかにもヴィルトゥオーソ的なアレンジで、とてもマツーエフらしい。
ゲルギエフが誕生日の時には「ハッピーバースデー」をアレンジしてアンコールで弾いて見せるなどの茶目っ気ぶり。いいですね。
デニス・マツーエフのおすすめ演奏動画
鍵盤を破壊しそうなパワフルさが売りのデニス・マツーエフ。そんな彼の演奏動画をみていくことにしましょう。
ピアノ協奏曲第1番(リスト)
こちらはチャイコフスキー国際コンクールのファイナルでの演奏動画。
もう冒頭の凄まじいオクターヴからいかにもマツーエフといった感じ。
作曲者のリスト自身、テクニシャンぶりを示すために派手な演奏をしていたと考えられるので、そういう意味ではちょうど良いのかもしれません。
にしても、この頃のマツーエフは細いですね。今のぽっちゃりとしたお腹が嘘みたいで。
テクニック的にもかなり安定しているので、優勝も十分納得のいくクオリティーですね。
ピアノ協奏曲第3番(ラフマニノフ)
言わずと知れたラフマニノフの超難曲がピアノ協奏曲の3番。
ラフマニノフはなんだかんだ手が大きくなくてもなんとかなる曲も多いのですが、この曲は手のサイズによる有利不利が大きい印象。
そう言った意味でも、恵まれた体格を持つマツーエフはうってつけなのかもしれません。
ラフマニノフの曲は音も多く重厚な作りになっており、それをしっかり響かせることができるエネルギーも求められますからね。
ちなみに、マツーエフはエネルギーが有り余っているがゆえに、一晩でラフマニノフの協奏曲を全て演奏するというなかなかワイルドなプロジェクトも実現しているようです。
恐ろしいスタミナであります。
デニス・マツーエフのおすすめCD
デニス・マツーエフの残した名盤を見ていきましょう。
Unknown Rachmaninoff
こちらラフマニノフの作品を集めたアルバム。
ラフマニノフのソナタをここまで正確に弾ける人もなかなかいないのではないでしょうか。
弱音の繊細さなどを求めるとどうしてもトリフォノフらに劣ってしまう感は否めないのですが、かわりにラフマニノフらしい雄大さを存分に堪能することができます。
おわりに

さて、今回はデニス・マツーエフをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
賛否両論が分かれるであろうピアニストの代表格ですが、テクニックも高いので見る人によっては非常に爽快。そんなピアニストです。
一部熱狂的なファンもいるようなので、あなたも気に入ったならば、ぜひ追っかけてみてはいかが。